飛節の関節炎と診断されても、必ずしも馬の競技生活が終わるわけではありません。適切な獣医療を受け、運動や飼養環境、日々の管理を調整すれば、多くの馬は快適に暮らしながら活動を続けられます。
獣医理学療法士のキャサリン・マーシャルが、ストレッチやマッサージ、ポールワーク、日常のルーティンに取り入れられる管理方法など、飛節の関節炎を抱える馬を支える実践的な方法をご紹介します。
前回の記事 馬の飛節|よくある問題、診断、治療 で解説したように、飛節は非常に複雑な関節で、競技馬にとって重要な役割を果たしています。飛節に問題が生じると、馬は関節炎による痛みや不快感を避けたり、軽減したりするために歩様を変えて補います。その結果、関連する筋肉、腱、靭帯に、これまでとは異なる負荷がかかり、代償性の筋緊張亢進や肥大(過剰な発達)が生じます。
飛節の屈曲が制限される可能性があることに加え、飛節に直接加わる衝撃力を減らそうとして、馬は歩幅の振り出し期に患肢を外側へ振り出す(外転させる)ことがよくあります。その結果、肢の内側と外側の両方の筋肉に異なる力がかかり、緊張したり過剰に発達したりすることがあります。また、腰部の傍脊柱筋、臀部、ハムストリングス(下の画像を参照)、特に後肢の半膜様筋と半腱様筋の緊張が高まることもよく見られます。これも、馬が患肢の着地による衝撃を和らげ、軽減しようとするためです。その影響は、騎乗時に背中や鞍の後方がこわばること、後肢の歩幅が短くなることなどに表れる場合があります。
こうした組織の機能を可能な限り正常に保ち、さらなる問題を防ぐためにできることは数多くあります。

飛節の関節炎がある馬の体幹の筋力を維持する
馬は、けがや関節疾患による痛みや不快感を抑えるため、患肢にかかる負荷を減らそうとします。患肢を休める頻度が高くなることもあります。こうした負荷の軽減が続くと、体幹の筋肉にも影響が及び、姿勢が崩れたり、二次的な問題につながったりする可能性があります。毎日の習慣として、おやつを使ったストレッチを行うことで、体幹の筋力と柔軟性を維持できます。
馬をまっすぐ立たせ、おやつを追わせながら、まず左右それぞれの腹帯の位置へ、次に左右それぞれの脇腹へ、前肢の球節の外側へ、胸の位置へ、前肢の間へとゆっくり誘導し、最後に上空へ向けて首を伸ばさせます。これらの運動は、筋肉が温まっているときに行うのが最適です。そのため、運動後、馬具を外してから、馬の体が冷えきる前に行うことをおすすめします。現在、運動をしていない馬の場合は、ストレッチの前にその部分をマッサージして筋肉を温めることができます。 おやつを使ったストレッチの詳しいガイドはこちらをご覧ください。
飛節の関節炎がある馬のマッサージ
マッサージは、筋肉の柔軟性を保ち、歩様の変化につながる過度な緊張を防ぐのに役立ちます。軽くなでるエフルラージュや、より深く揉みほぐすペトリサージュなどの手技で、定期的にマッサージを行いましょう。特に、腰部の傍脊柱筋と臀部の筋群(鞍の後方から臀部にかけて、背骨の両側を走る筋肉)、およびハムストリングスの筋群(後肢の後ろ側から飛節にかけて走る筋肉)を重点的にケアしてください。
マッサージミット ホットスポット または マッサージミット ホットドット は、こうした部位のマッサージに特に便利です。慣れていない方が手でマッサージをするのは大変なことがありますが、これらの製品を使えば、適切な手技が分からないという心配もありません。ミットの温熱は筋肉の痛みを和らげるのに心地よく、適切な場合には、運動前に飛節周辺を温めるよう獣医師やセラピストから勧められることもあります。
時間が許せば、マッサージは定期的に行うことができます。運動後の習慣として取り入れれば、筋肉の緊張が蓄積するのを防ぐ助けになります。筋肉の柔軟性を保つため、週に2~3回(時間が許せばそれ以上)、馬の左右それぞれに20~30分かけて行いましょう。特定の部位をマッサージしたときに馬が特に嫌がる場合は、獣医師またはセラピストに相談することをおすすめします。
多くの方にとって、厩舎で過ごす時間は貴重で、特に冬場はなおさらです。 エクリブリアム マッサージパッド と マッサージパッド ヒートセンス は、背中の筋肉に手軽で効果的なマッサージを提供します(ヒートセンスはマッサージと温熱)。騎乗前のウォームアップに役立つツールとしても便利です。こうした製品の大きな利点のひとつは、馬がマッサージを受けている間に、ほかの厩舎作業を進められることです。
飛節の関節炎がある馬にポールワークを取り入れる
後肢の可動域を広げるためにポールワークを取り入れることは非常に有効ですが、慎重に行う必要があります。リハビリにポールを使うか判断する際は、馬が運動を正しく行えるか、ポールにぶつからずに越えられるかを考慮してください。ポールを使った運動が馬に適しているかどうかは、獣医師またはセラピストに相談できます。牧場への行き帰りに、道の途中へ間隔を空けてポールを数本置くだけでも、馬がより大きな可動域で肢を使うよう促せます。
ポールを使う際は、馬の体力と能力を考慮し、シンプルに行うことが大切です。ポールを1本、きれいにまたいで歩くほうが、馬がうまくこなせないポールの組み合わせよりも有益な場合があります。まずは簡単な内容から始め、時間をかけてポールの本数を増やしていきましょう。ポールを越える馬の動きを、必ず誰かに地上から見てもらうようにしてください。ポールの配置に沿って歩幅が一定に保たれ、左右の肢の屈曲・伸展が均等になることを目指します。飛節の関節炎と診断された馬の場合、肢にかかる負荷をできるだけ均等に保つため、カーブではなく直線上にポールを配置するのが望ましいと考えます。
飛節の関節炎の日常管理
飛節の関節炎を抱える馬を管理する際は、最良の結果を得るために飼養管理や運動内容の変更が必要になることがあります。獣医師、セラピスト、装蹄師による定期的な評価を受けることで、より良い結果が期待できます。長時間、馬の動きを制限することは避け、週を通して運動量を一定に保つようにしましょう。硬い地面や深い馬場で過度に運動させないようにし、地面の状態や運動する場所の地形にも注意してください。硬い地面や坂道では、患部の関節にかかる力が大きくなります。
馬のけが、疾患、病気のいずれについても、馬に適した対応が分からない場合は、獣医師または筋骨格系セラピストに相談することをおすすめします。
この記事を執筆してくださったキャサリンに感謝します。
キャサリン・マーシャル
獣医理学療法士
AdvCert VPhys DipAVN(surgical)RVN Cert Clin Ed Acc Midx MRAMP, MIRVAP
